Hichiriko
篳利胡
Part 7 運指の改良
ずっとマウイ・ザフーンを吹いていたので、当初ヒチリコのX型運指に若干の違和感があったのですが、マウイ・ザフーンの運指が基になっているだけあって次第に慣れました。
こうしてしばらくはX型運指で問題なく吹いていたのですが、だんだん速いフレーズを吹くようになってくると、また若干のぎこちなさを感じ始め、もっと普通のサックスのように吹けないものかと欲が湧いてきました。
普通のサックスは閉管楽器なのに開管楽器のようにオクターブの切り替えができてあたかも2倍音系の楽器のように扱えます。それは、マウスピースを取り付けるネックから楽器の先まで段々管径が広がっていて円錐のような形をしているために開管楽器のような周波数特性に補正されるらしいのです。
それはともかく、ほぼ一本のパイプのような竹で少しでも普通のサックスに近い感じの運指にできないものかと新たな運指を考え始めました。
普通のサックスにはオクターブキーがあるから楽にオクターブ切り替えができます。それをヒチリコで実現できないものか、指穴をオクターブキーの代わりにできないかと考えていると、アイデアが閃きました。
あくまでヒチリコは閉管楽器であり、基本的に開管楽器のようなオクターブ切り替えはできるわけがないとわかっているので、運指のどこか一部分だけでもオクターブ切り替えの感じを出せればいいのではないかと考えたのです。すると以外にすんなり「ミ」の音をオクターブ切り替えできる運指を思いついたのです。
1番上の指穴の位置を少しずらせばあたかもオクターブキーのようになるのではないかと仮定して、低い「ミ」を出している状態で、1番上の指穴を開けたときに丁度オクターブ上の「ミ」が出るようにその指穴の位置を決めたのです。するとうまい具合に倍音が働き、左手の指を全部開けることなく前後の音階もつながるとともに音量もアップしたのは儲け物でした。
「ミ」の1音だけでもオクターブ切り替えができると運指の流れが若干サックスっぽくなって吹きやすなったのです。
こうして新しい運指が誕生し、これをヒチリコの標準運指とすることにしてヒチリコ(Hichiriko)の頭文字を取ってH型運指と命名しました。
ところが、これで運指も固まったと思ったものの、そこでは終りませんでした。