Part 6 X型運指のヒチリコ誕生

 

 扱い易さを考え指穴をリコーダーと同じ数にして、使う指も同じにすることを目標に開発を進めていきました。


 だが、問題は運指でした。

 最低限マウイ・ザフーンと同じくクロマチック音階(12音階)で2オクターブの音域を持たせることができる運指を開発しなけれはならないと思いました。

 試しにリコーダーと同じ運指にできないかと試作してみたのですが、どうしても1オクターブを越えるとクロマチックでつなげることができませんでした。何音かどうしても音が抜けてしまうのです。

 その理由は、楽器としての発音上の原理が根本的に違うからでした。

 リコーダーは笛であり、開管楽器なのだ。音を作り出す(息が抜ける)部分が開いているからそう呼ぶのでしょう。

 縦笛でも横笛でも開管楽器として2倍音系の周波数特性を持っていて、ほぼ同じ運指で1オクターブ上の音(周波数が倍になる)が出るのです。

 だから横笛などは正確性はともかく結構簡単に2オクターブを持たせることができるのです。

 一方、ヒチリコはバンブーサックスでありクラリネットのようなリード楽器であるため、閉管楽器という分類になります。
 これは、音を作り出すリードの部分がマウスピースと下唇で塞がれて息が抜けない(閉じている)からでしょう。

 閉管楽器は3倍音系の周波数特性を持っていて「ド」の運指のまま倍音を出そうとすると、2倍音ではなく3倍音になってしまい、1オクターブ半上の「ソ」になってしまうのです。

 そのため、1オクターブを越えたところから「ソ」までの間が簡単にはつながらないのです。
 そこが閉管楽器であるバンブーサックスを作る上で非常に難しい部分なのです。

 やはりその部分についてほぼ解決しているマウイ・ザフーンは画期的だと思います。
 ただ、「ファ#」の運指を独立させることができなかったところがまことに惜しいところです。

 だからヒチリコは、マウイ・ザフーンの運指を基に「ファ#」も独立した運指を持たせると共に左手小指の穴を無くした運指にすることを目指しました。


 試行錯誤しながら試作を繰り返す中、単純にマウイ・ザフーンの運指を微妙に半音ずらす感じにすればいけるんじゃないかと考え、さらに試作を繰り返した結果、ついに新しいヒチリコ用の運指が誕生したのです。

 その運指をX型運指と名付けたのだが、それはマウイ・ザフーンに敬意を表してマウイ・ザフーンの英語表記であるXaphoonの頭文字取ったのものです。

 こうして、最初に小さな8穴バンブーサックス「ヒチリコ」G管X型運指が完成したのですが、その時点ではまだ楽器名は付いていませんでした。

 後に、篳篥とほぼ同じ大きさで調も同じであること、リコーダーと同じ指穴の数であることから、篳篥の「篳」(ヒチ)とリコーダーの「リコ」を取ってヒチリコと命名したのです。

 そして、中国の二胡のような雰囲気の演奏表現もできることから、その漢字を当てはめて、「篳利胡」と表記することにしたのです。

<オマケ>
 その後、だいぶ経ってから考えたのだが、一見日本の竹を使い篳篥風なので和楽器のようだが、実際は和洋中を折衷した楽器で、あらゆるジャンルに合わせて雰囲気を変えて吹ける親和性が高い楽器であることから「親和楽器」(新和楽器の意味を込めた)という分類を勝手に考えました。

 自分では、この楽器の特徴を一言で適格に表現したものと思っています。